宇都宮地方裁判所 昭和63年(わ)58号 判決 1988年5月09日
本籍並びに住居
栃木県下都賀郡壬生町大字壬生丁二〇四番地
不動産貸付業
渡邉イチ子
昭和二年二月一〇日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官立澤正人出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役七月及び罰金五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、栃木県下都賀郡壬生町大字壬生丁二〇四番地において、不動産貸付業を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、昭和六〇年度分の実際所得金額が四三五万六三三円、分離課税による長期譲渡所得金額が九三八五万四二〇〇円であったのにもかかわらず、二重の土地売買契約書を取り交し実際の売買金額よりも極端に低い土地売買に見せかけ、更に一括して土地を売却したにもかかわらず、三か年分割して売却したように装う等の方法により所得を秘匿したうえ、昭和六一年三月一三日、同県栃木市本町一七番七号所在の栃木税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一四六万六五六〇円、分離課税による長期譲渡所得金額が六一二万五〇〇〇円で、これに対する所得税額は一二六万五九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により前記年分における正規の所得税額二四三〇万五一〇〇円と右申告税額との差額二三〇三万九二〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
一 被告人の
1 当公判延における供述
2 検察官に対する供述調書三通
一 収税官吏の被告人に対する質問てん末書一三通
一 篠原政芳及び篠原喜美子の検察官に対する各供述調書
一 収税官吏の篠原喜美子、若林他家夫、須藤和也、永坂満、日向野章男、大橋好一、黒田冨士子及び桑久保千恵子に対する各質問てん末書
一 高橋清一、安生利、菊池和子、種市進、中西日出夫、有限会社マート・グリーン(二通)、飯島久、池沢弘美、森田勝己、宮嶌仁、安本登志男、若林貞男、杉岡照夫、山崎文吉(二通)、隅内幸一(三通)、石川徹(二通)及び久我昇子作成の各答申書
一 被告人作成の答申書二通
一 国税査察官作成の査察官報告書六通
一 収税官吏作成の壬生町農協壬生支所、栃木相互銀行おもちゃのまち支店、足利銀行同支店及び宇都宮信用金庫壬生支店に関する各調査関係書類
一 収税官吏作成の長期譲渡所得収入金額、取得費、譲渡費用、不動産所得収入金額、減価償却費、租税公課、損害保険料、修繕費、通信費、交際費、光熱費、車両費、雑費、農業所得、利子所得、増差所得(二通)、現金、預金、未収金、立替金、着物洋服等、店主勘定、措置法による取得費、申告所得利子所得及びその他所得に関する各調査書
一 収税官吏作成の脱税額計算書
一 栃木税務署長作成の昭和六二年四月二一日付及び同月二四日付各証明書
(法令の適用)
被告人の判示所為は所得税法二三八条一項に該当するところ、所定の懲役と罰金とを併科し、その所定の刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役七月及び罰金五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金二万円を一日に換算した期間被告人を労務場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 榊五十雄)